【読書録】AI vs. 教科書が読めない子どもたち
以前にもブログ
【読書録】「人工知能は人間を超えるか」を読んだ。 - ちいさないっぽ
にて「AIに怯えている」話を書いた。
このときは
「人間=知能+生命」であるからだ。(中略)生命の話を抜きにして、人工知能が勝手に意思を持ち始めるかもと危惧するのは滑稽である。(P.203-204)人工知能は人間を超えるか より引用
ここから、ターミネーターみたいなことは起こらないんだ、落ち着こう!!
と思った。
しかし今回読んだ本。
AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井 紀子 東洋経済新報社 2018-02-02 売り上げランキング : 52
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ゾッとする。本当に背筋がヒヤリ。
焦燥にかられる。うかうかしている場合じゃなああああい!!!
という気持ちになるので、ぜひたくさんの人に読んでほしい。
著者の新井紀子さんは、「ロボットは東大に入れるか」という人工知能プロジェクトを始めた方。
これはロボットは東大入試に合格できるレベルまで達している、という意味ではない。
東大に合格できるとは誰も思っていない。
本当の目的は、AIにはどこまでのことができるようになって、どうしてもできないことは何かを解明すること。
そうなの、それが知りたかったんです!!教えてください!!
◆前提:AIは存在しない
実現するとしたら
①知能の原理を数学的に解明し、それを工学的に再現するパターン
②工学的に試したらいつのまにかできちゃったパターン
のどちらか。今のところどちらも現実的ではなく、そして少なくとも今話題のディープラーニング(統計学的手法)の延長では実現できない…統計学という数学の方法論に限界があるため。
◆AI進化の歴史
第1次AIブーム:推論と探索
⇒迷路やパズルはできるけど、条件が限定できないと無力=フレーム問題
第2次AIブーム:エキスパート
⇒与えた専門知識だけで処理できればいいが、人間の”常識”が壁となる
第3次AIブーム:機械学習(統計的手法)=今ココ
⇒ディープラーニングにより特徴量の設計が不要に。効率が上がる。特に画像処理においてはディープラーニングの恩恵を受けている。
◆AIが仕事を奪う
今後、10年から20年の間に、働く人々の半数が仕事を奪われるかもしれないのです。実は、この予測を最初に世に出したのは、オックスフォードのチームではありません。私です。2010年に出版した『コンピュータが仕事を奪う』でそう予測したのです。ところが、日本人は真に受けませんでした。出版直後、私は東京駅前の大型書店に、この本がどこに置かれているか見に行きました。ビジネス書の棚をいくら探しても見当たらない。結局どこに置かれていたかというと、SFのコーナーでした。その事実に私は慄然としました。p.76
SFではないんです。ありえないことじゃない。その未来はそう遠くないから、真剣に向き合わないと。
◆AIにできること
AI(コンピューター)が計算機であるということは、AIには計算できないことを、基本的には足し算と掛け算の式に翻訳できないことは処理できないことを意味しています。
長い歴史を通して、数学は、人間の認識や、人間が認識している事象を説明する手段として、論理と確率、統計という言葉を獲得してきた、あるいは、獲得できたのはその3つの言葉だけだった、というのがこの話の要点です。p.115
数学が発見した、論理、確率、統計にはもう一つ決定的に欠けていることがあります。それは「意味」を記述する方法がないということです。
「意味」。ここがAIに欠けていること。
ということは、ここで人間が勝負しなければ勝ち目がない。
◆人間には「AIにできない仕事」ができるのか?
著者は、2011年に東ロボくんのプロジェクトをスタートした。
同じ年に日本数学会の教育委員長として「大学生数学基本調査」を率いたそう。
その結果から、学生の基本的な読解力に疑問を持った。
そこで東ロボくんの勉強をもとに、リーディングスキルテストを開発。
全国2万5千人の中高生の基礎的読解力を調査した。
しかしその結果は...
AIと差別化しなければならない分野においても、半分の生徒がランダム並みだった。
つまりこのままの読解力では、AIにできない仕事は、多くの人間にもできない。
◆AI導入で淘汰される企業
薬剤師について記載があったので、これは自分に危機感もたせるためにここに引用しておこうと思う。つらい。
けれども、お薬手帳などで薬剤師が管理するかわりに、保険証をICカードにして投薬履歴を管理し、AIが薬の副作用の可能性をチェックしたり、ジェネリック薬の有無の情報を提供したりするシステムにした方が確実で、しかも、手数料は不要です。ドラッグストアの店頭で、保険証を入れると処方された薬が出てきたり、AIが「今回A医院で処方された薬は、先週B医院で処方されたX薬と同時に服用すると、副作用が出る可能性があります。出力された薬剤管理票を持って、A医院の先生にご相談ください」と指摘したりするほうがかえって安全なのではないでしょうか。p.268
これ以外にもやってることたくさんあるよとか、
減薬や調整など機械にはできないような柔軟性きかせて対応してるんだよとか、
相互作用ってそんなに単純じゃないよとか、
医療ってもっとあったかいんだよとか、
なんかいろいろ思うことはあるんだけど、
少なくともAIが替われる仕事もかなりあるということは真摯に受け止める。
そしてAIに替われない部分の仕事をもっと強化しないといけないし、それができない薬剤師は 淘汰される可能性があることをこの先意識して、やるべきことをやっていかないといけない。
ということで。
人間らしくはたらこう。