【読書録】回避性愛着障害
人の気持ちとはなんだろう。
私がどんなに「相手の気持ち」を考えても、それはあくまで「私がどうにかこうにか相手の立場に立ったと想定して考えた相手の気持ち」であって、ぜんぜん違うものだ。
人はいう。相手の気持ちを考えなさいと。
またある人はいう。人の気持ちなんて考えてもわからないから、自分のことだけ考えなさいと。
『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』
・著者:岡田尊司
・出版社:光文社新書
回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち (光文社新書) 岡田 尊司 光文社 2013-12-13 売り上げランキング : 7574
|
◆問題提起:現代人に広がる回避型の愛着スタイル
現代人に回避型の愛着スタイルが増えているが、これはその人の人生を困難にするだけでなく、この社会自体の維持を困難にする問題である。
新しい種の誕生にも匹敵する、根本的なライフスタイルの変動であり、まったく新しい価値観でしか、その人生を測ることはできないのである。
ただ問題は、その新しい価値観が、社会の維持と両立するかどうかは、今のところ不透明だということだ。本書p.5
つまり、看過できる問題ではなくなってきている。
意外と自分の身近にも困難を抱えている人がいるかもしれない。
◆回避型の特徴:基本編
回避型の本質は、不安が強いとか消極的ということではなく、
親密な信頼関係や、それに伴う持続的な責任を避ける点にこそあるということだ。本書p.19
回避型の人は、自己開示や感情表現を抑えてきた結果、気持ちや感情があいまいになりやすい。気持ちや感情といった情動は、理性でくくりきれないものだが、実は、意思決定にとても大切な役割を果たしている。
というのも、根本的な行動の指針を与えてくれるのは、情動だからである。本書p.98
◆回避型の特徴:職業生活と人生編
ここではざっと項目だけ抜き出しておく。
・仕事と割りきる働き方
・傷ついた心より問題解決
・気が付いたら孤立
・冷静さと専門性が強み
・弱音を吐くより、静かに身を引く
・自分の人生に対する無関心
・面倒くさがり屋と現状維持
・チャンスから逃げ出してしまう
あてはまるひと、いるだろうか。
◆問題解決の提案:愛着を修復する
興味深い研究が取り上げられていた。
ある研究(Zuroff&Blatt,2006)では、重症のうつ病の患者に対して、四つの治療法がランダムに割り当てられ、十六週間の治療後、その効果が調べられた。
すると、効果を左右するのは、どの治療法を選択したかではなく、治療者と患者との関係の質という要素であった。
すなわち、患者の気持ちを正確に汲み取り、どんなときも患者を肯定的にみて、居心地の良い関係を保つとき、うつが改善し良好な状態が維持されたのだ。本書p.230
これに関しては、うつの治療に限らないことかもしれない。疾患により治療の影響に差はあるだろうが、患者と治療者の関係が良好であることに越したことはない。薬という化学物質が与える影響と、人間関係が与える影響とでは、どちらが大きいのだろう。化学物質といえど、思っているほど大きな影響は及ぼさないのかもしれない。
しかし心の疾患であるうつに関しては、化学物質である程度「作用」を保証されている薬よりも、関係の質のほうが影響が大きいことは興味深い。
そして接する側の問題解決の方法として、まず愛着の改善に努めることが重要であると述べられている。
注意点として、支援は自立を前提としたものであるべきで、干渉してはいけない。
共感や支えが満たされたとき、他者に対して思いやりが持てるようになるそうだ。
まずは安心感を回復させることを優先する。
これは接する側としてはかなり難易度が高く、負担が大きいように思う。
本人の問題解決方法については、以下の通り述べられている。
逃げるのではなく、面倒事にも自分から飛び込んでいくという攻めの姿勢に転じることが、回避からの脱却において決定的な意味を持つ。そして、そこで起きることは、自分の責任を引き受け、自分の人生を自分の意思と決断で生きようとする覚悟を持つことである。それはひと言で言えば、主体性を取り戻すということでもある。
主体的な転換が起きるために必要なのが、自分の気持ちや考えを言葉にするという作業である。自分が何を望んでいるかをあいまいにせずに明確にして、それを口にすることが大切なのである。ふだんからそうすることを心がけたい。本書p.280
以上から、まずは自分の気持ちや考えを言葉にする。
言葉にすることで気持ちを明確にできれば、主体的な転換が起きる。
主体性を取り戻そうとできれば責任を避けない。
持続的な責任をさけずに親密な関係を築ければ人生の困難が減り、ハッピー。
安全感が満たされ、他者への共感が生まれて周りもハッピー。
言葉のちからを再確認。