【読書録】『誰も教えてくれなかった実践薬歴』を読んだ。
新人から仕事に慣れてきた中堅薬剤師に読んでほしい。
薬歴を『活用する』ことを今一度考えたい。
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薬歴といえば多くの薬剤師にとって
「これをいかに早く終わらせるかで残業の有無が決まる」ものじゃないか。
私のひどい薬歴の〈定期処方バージョン〉を見せると
S:体調変わりありません。副作用はありません。
O:継続中の薬
A:服薬により体調よい様子。副作用なしにて継続問題なし。
P:薬効・用法・用量説明。継続してください。
こんな感じ。
6年制大学卒で「POS」や「SOAP」については一応学校で習っている。
(POSときたら問題志向システム、的な)
だから「形式」は一応満たしている。と思っている。
でもこんなんで済ませようとしてると、投薬もそういう「決まりきったもの」になる。当然だ。
そこで『実践薬歴』でSOAPの「思考」を学ぶべきなんだ。
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薬剤師の考え(仮のA)があっているかをたしかめていくのです。このことを「SOAP思考」とよびましょう。(P.50)
そもそも「仮のA」を持つためには、自己研鑽が必要だ。知識や経験が多いほど仮のAを想定でき、やっと患者からSやOを引き出すことができる。薬剤師は学び続けなければならない。
仮のAを持つことができれば、SOAP思考を活用した薬学的管理が行えて患者の生活にもっと踏み込んで寄り添った治療が行えるんじゃないだろうか。
だから目的はもちろん、美しい作品のような薬歴を書けるようになることではなくて、
ケアや教育に役立てるために薬歴を『活用する』方法を学ぶこと。
薬歴を活用すればこんなに投薬に、思考に、深みがでるのかと読んでいて刺激的だった。
自分の仕事は浅かったなあと反省した。自分の書く薬歴同様に。
だからやっぱり、
”薬歴を見れば、その薬剤師の「仕事の質」がわかる!”
ということだ。
患者ケアの質は、ケアする人々の教育の高さで決定される。その教育を高めるには、良い記録に負うところが大きい(P.12)
良い記録には、原因と結果の間にディテールがあります。人間がどのように考えて行動したのか、そのディテールがあるからこそ、伝えたいことが相手に伝わるのです。(P.165)
読み終わった時には、薬学の面白さと深さに震えていてもたってもいられなくなる。
そうしたら、同じソクラテスこと山本雄一郎先生の著書『実践薬学』を読もう。
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以下『実践薬歴』の目次
・はじめに
第1章:薬歴とは
・1.薬歴の歴史
・2.POSとは
・3.SOAPとは
・4.薬歴をつける際のいくつかの注意点
第2章:SOAP形式の薬歴がうまく書けない理由
・1.薬歴がうまく書けない理由は誤訳にある
・2.ごちゃごちゃした薬歴になってしまいます
・3.SOAP形式の薬歴が書けない本当の理由
・4.いつも同じ処方なので薬歴に書くことがありません
第3章:薬歴は薬学を通して患者を理解するためのツールである
・1.医師と違う視点を常に持つ
・2.併用注意は薬剤師の考えを伴って投薬される
・3患者の個人データを落とし込む
・4.すぐに答える、そこにアセスメントはあるのか
第4章:高齢者の薬学的管理
・1.高齢者の高血圧治療
・2.高齢者の糖尿病治療
・4.高齢者の漢方療法
第5章:薬歴から学ぶ
・1.薬歴を研修教材にする
・2.症例ベースの問題に取り組む
・3.学んだことを薬歴に還元する
・4.ディテールを保存する
・おわりに