【EBM復習】JJCLIP#6 インフルエンザの検査で陰性ならインフルエンザじゃないですよね?
季節的なチョイスで#6。笑
振り返ると全然整理できていないことが判明。
伝えたいのは、タイトルの答えは「そんなことありません」。
[仮想症例シナリオ]
あなたは保険薬局の薬剤師です。インフルエンザが流行期を迎え、あなたの地域にはインフルエンザ流行警報がでています。朝からインフルエンザと思われる患者さんばかりで、夜の6時を回っても途切れる気配がありません。
そこに一人の患者さんが浮かない顔をして処方箋を持ってこられました。
「今日は、ものすごく混んでて、先生によく確認できなかったんですが、腑に落ちないことが多くてちょっと伺っても良いですか?」
と患者さんが切り出しました。
「まず、先生は“インフルエンザの検査はしなくても、あなたはインフルエンザだと思います。”とおっしゃって、心配なんで、どうしても検査してほしい、って頼んだんです。結果は陰性だったんで、安心したんですが、先生はそれでも“インフルエンザだろう”っておっしゃるんです。“薬いらないと思いますけど、どうします?”って聞かれたんですけど、インフルエンザだったらやっぱり飲んだほうが良いかなって思って、とりあえず、“じゃ、ください”って言って、今日はこの薬が出たんですけど…。インフルエンザの検査はしなくて良いってどういう事ですかね。それと陰性でもインフルエンザです、ってどういう意味でしょうか。よくわからないのですが、私は本当にインフルエンザなのでしょうか?」
この患者さんの主な情報と主訴は以下の通りです。
*30歳女性。喫煙(-)。電車通勤で都内まで勤務。
*今日の10時くらいから症状が出始めた
*症状は、主に発熱(39度)と寒気、関節の違和感
*インフルエンザの検査はしなくても良いってどういうこと?
*結局のところ、私はインフルエンザなのでしょうか?
インフルエンザ迅速診断キット検査の性能について少し調べてみました。PubMedのClinical Queriesに「rapid influenza antigen detection test」とキーワードを入れ、カテゴリーを「Diagnosis」スコープを「Narrow」にして検索すると以下の論文が見つかりました。
[文献タイトル・出典]
Factors influencing the diagnostic accuracy of the rapid influenza antigen detection test (RIADT):a cross-sectional studyBMJ Open.2014 Jan 2;4(1):e003885. PMID:24384898
Pubmed: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24384898
BMJ Open: http://bmjopen.bmj.com/content/4/1/e003885.long
PDF:http://bmjopen.bmj.com/content/4/1/e003885.full.pdf+html
引用元 <http://syuichiao.blogspot.jp/2014/02/26-2-16-20-45-21-00-90-facebook.html>
♦シナリオのPECO
P atient:30歳女性。本日10時から発熱39度、寒気、関節の違和感の症状あり
C omparison:インフルエンザの検査をする
E xposure:インフルエンザの検査をしない
O utcome:診断に差があるか
♦論文のPECO
P atient:上気道感染症状があり37度以上の発熱がある82名の外来患者(2010.12~2011.4)
E xposure:RIADT(RapidTesta FLU Ⅱ)=診断法
C omparison:VRV(Verigene test)=標準検査による診断
O utcome:
Sensitivity(感度):72.9%
Specificity(特異度):91.3%
PPV(陽性的中率):95.6%
NPV(陰性的中率):56.8%
♦研究デザインは横断研究か?
・cross-sectional studyの記載あり。
*横断研究とは、
ある集団のある一時点での疾病(健康障害)の有無と要因の保有状況を同時に調査し、関連を明らかにする方法。要因と疾病の関連を評価するため、罹患率でなく有病率が用いられる。
→現時点での有病率がわかる
⇔縦断研究とは
前向き研究、後ろ向き研究が相当。ある一定期間データをとる。
→病気の発症率などがわかる
♦標準検査は妥当か?ゴールドスタンダードと比較しているか?
・VRVがゴールドスタンダードと書かれているので、問題なし
*ゴールドスタンダード(リファレンススタンダード)とは、
(感度特異度100%が理想だが、そんなものはないから)現時点で一番感度特異度がいいとされている方法。
♦対象患者は臨床上適切か?
…例えば、インフルエンザの症状あるか(発熱がない人を検査しても意味ない)
・”普通の風邪”か”インフルエンザ”かの判別が必要な患者さんを対象にしているので、問題ないと判断
♦診断法と標準検査は全ての患者で行われているか?
・All were tested と記載あり。行われている
♦診断法と標準検査は独立して判定されているか?
…一方の診断結果を知ったうえで他方の検査をすると、情報バイアスが生じる
・同じ大学病院内なので、微妙
♦診断法と標準検査はいずれも再現性があるか?
…経験や主観の違いなど、診断者によって結果に差がでてしまうのでは信憑性△
・レジデンスが研修を受けて実施したと記載あり
♦結果(Table. 2)
・TP=A=43
・FP=B=2
・P=A+B=45
・FN=C=16
・TN=D=21
・N=C+D=37
*有病率:有病数/母集団
(TP+FN)/全体=(A+C)/全体=(43+16)/82=72%
*感度:”実際にインフルにかかっている”うち検査で正しく陽性とした度合い
TP/(TP+FN)=A/(A+C)=72.9%
*特異度:”実際にインフルにかかっていない"うち検査で正しく陰性とした度合い
TN/(FN+TN)=D/(C+D)=91.3%
*陽性的中率:”検査で陽性と判定した"うち検査で正しく陽性とした度合い
TP/P=43/45=95.6%
*陰性的中率:"検査で陰性と判定した"うち検査で正しく陰性とした度合い
TN/N=21/37=56.8%
♦結論
陰性的中率56.8%から判断して、陰性はあてにならない。
事前確立が50:50のときにやるのが検査!
検査が病気を決めるわけではない。
医師の診断を補完するものである。
医師もそのほかの人もその点を理解する必要がある。