【読書録】「人工知能は人間を超えるか」を読んだ。
私が小学生のころ、プロフィール帳が流行っていた。
友達から渡されたら、書かれた質問に答える形で自分のプロフィールを書いていく。
今は無いのかなあ。SNSがあれば、相手の表向きのことはたいていわかるような気がする。
配った側が一番見たいのは
”好きな人の名前はズバリ!_____(イニシャルでもOK!)”なのだけど、
好きな○○に関する質問は他にもたくさんあって、
好きな映画は?という項目に、いつも私は”ターミネーター2”と書いていた。
ありえそうな近未来感。ありえてはいけない緊張感。
今も好きな映画。
でもおかげで、”人工知能は炉に沈めるべきもの”という印象がついてしまった。
人工知能は人間を超えるに決まっているし、人間の制御を超えるものは作ってはいけないに決まっている。怖かった。
しかし、そうも言っていられない。変化は止められないものだし、人工知能はすでに身近なものになりつつある。
ならば決めつけずに正しく理解しようと、ついに向き合うことを決めた私であった。
変化の激しい分野なので新しい情報も入れていくべきだろうが、まずはこちら。
人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)
- 作者: 松尾豊
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/中経出版
- 発売日: 2015/03/11
- メディア: 単行本
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(著:松尾豊 氏)(出版:KADOKAWA)
あらためてここの場に内容をまとめるまでもない。本を読めばそれが最高。
それが一番わかりやすい。
著者の”人工知能を正しく理解してほしい”という熱意がすごい。
熱のある文章は読んでいてわくわくするし、こちらもそれ相応の熱意で読みたいという気持ちになる。
もうひとつ、私がわくわくしたのは、人工知能を知ることは人間を知ることだと気づかされたこと。”知識”とは?”常識”とは?”概念”とは?
印象的だったところを書き留めておきたい。
♦人工知能の完成が困難だった理由
人間は特徴量をつかむことに長けている。(本書P.136)
これまで人工知能がさまざまな問題に直面していたのは、概念を自ら獲得することができなかったからだ。(本書P.140)
学習の根幹をなす「分ける」という作業は、機械にとって難しかった。
人間がなんとなく行えている「特徴をつかむ」ことができず、人間が介入するしかなかったためだ。
人の介入が必要ということは、結局莫大な時間と労力がかかってしまい、限界を迎える。
”特徴量をつかむ”。
今まで特徴をつかもうと意識したことがなくても、人はそれが得意らしい。無意識に脳が処理していることの多さに改めて気づかされる。むしろ処理しないようにしていることがすごいのか?
少しずれるが、概念に関して、去年公開された”散歩する侵略者”という映画を観た。
宇宙人にのっとられた夫が”概念”を人間から奪うシュールでコミカルなお話。概念は言葉ではっきり説明できない、社会の中でつくられる輪郭のはっきりしないものだなと感じた。概念の獲得あっての知能だとは考えたことがなかった。
♦人工知能の壁を打破したもの
突破口となったディープラーニングについて記載がある。
ディープラーニングとは?
データをもとに、コンピュータが自ら特徴量をつくり出す。人間が特徴量を設計するのではなく、コンピュータが自ら高次の特徴量を獲得し、それをもとに画像を分類できるようになる。(本書P.147)
人間がその都度介入しなくても、コンピュータが特徴量を獲得する。
これによって、人工知能の可能性が大きく広がった。
特徴量を取り出すことについて、どういう発想が限界を突破したのかについても記載がある。ノイズが頑健性をもたらすという発想のおもしろさ。
このすごさ・おもしろさを自分はまだ完全には理解できていないかもしれない。
◆私の恐怖について
人工知能が暴走して、人間の手に負えなくなってしまうのでは?という私が感じていた恐怖に対して、記載があった。
今ディープラーニングによって人工知能ができるようになりつつあることと、人工知能が意思をもって人間を支配することは別物であると述べている。
その理由を簡単に言うと、「人間=知能+生命」であるからだ。(中略)生命の話を抜きにして、人工知能が勝手に意思を持ち始めるかもと危惧するのは滑稽である。(本書P.203-204)
ああそうか。やはり短絡的すぎた。怖いことが起こるとしたら、人工知能を活用する”人間”に倫理的に問題がある場合で、結局怖いのは人間の意思かもしれない。
♦著者の願い、我々が考えなければならないこと
読者のみなさんには、それぞれの仕事や生活の中で、人工知能をどのように活かしていけばよいか、活かすことができるのか、ぜひ考えてみてほしい。人工知能によって、この社会がどうよくなるのか、どうすれば日本が輝きを取り戻すのか、考えてほしい。そして、人工知能の現状と可能性を正しく理解した上で、ぜひ人工知能を活用してほしい。それが本書で伝えたいメッセージである。(本書P.255)
私が今やるべきことは、人工知能の幻想に惑わされて未来を憂うことではない。
いずれ訪れる未来に人工知能を活用するために、まずは相手を知る。
そのための最初の一冊として、本書はぜひおすすめしたい。
相手を知れば、おのずとこれから自分がやるべきことも見えてくる。
人工知能が得意なところは活用し、協調して目的の達成を目指す。
(私の代わりにCYPの相互作用を考えてくれると嬉しい)
自分にできることとは?自分にしかできないこととは?日々の業務や生活を通してそんな方向に意識をむけるもの、おもしろいかな。