ちいさないっぽ

心にうつりゆくよしなし事を、書くだけ。責任は負わない。

【薬局の疑問】腎不全患者さんの人工透析(特に血液透析)ってなにをするの?

透析クリニックと同一建物にある薬局として、学んできたこと。

初めてそういう薬局に配属されたときに、少し助けになれればなと。

◆腎臓のはたらき

 わかりやす!

❏水分量・イオンのバランスを調整する

❏老廃物を尿として排泄する

❏血圧を調節する

ビタミンDを活性化する

❏造血ホルモンを産生する

腎不全になるとこれらの働きが失われるので、透析や薬を使って働きを補う。

 

◆透析導入理由

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日本透析医学会 我が国の慢性透析療法の現状 p.17 より引用

割合として糖尿病性が多く、40%以上。

 

血液透析とは

こちらがイメージしやすくわかりやすいと思う。

血液透析(HD)について|透析について詳しく知る|扶桑薬品工業株式会社

腕に針を刺して血液を抜く

→ダイアライザに通して透析膜を隔てて透析液と触れさせる

→拡散と限外濾過を利用して、物質や水分の除去をする

 

❏できること:物理変化

・老廃物の除去

・水分の除去

・イオンのバランスの正常化

 

❏できないこと:化学変化

・血圧を調整する

ビタミンDの活性化

・造血ホルモンの産生

 

◆透析患者さんの薬(定期処方編)

❏血圧:上がりやすい⇒下げる治療

 

血液透析時には血液を抜くので血圧が下がりやすく昇圧剤を使うこともある。

透析終了後の患者さんはフラフラのこともある。

血液透析する日としない日とで血圧の薬の服用量を変えることもある。

 

❏リン:上がりやすい⇒下げる治療

リンが排泄できなくて体内上昇→血中カルシウム低下→補おうと骨からカルシウム分解して血中濃度上げる=リンもカルシウムも血中濃度高い

⇒結合してリン酸カルシウムが沈着(異所性石灰化)し、さまざまな病変を引き起こす。

消化管からのリンの吸収を抑えるのが共通の作用。

用法に特色がある。副作用に特色がある。一包化の適・不適に違いがある。

食前・食後にこだわるよりも(知っていることは重要だけれど)患者さんの服用しやすさも考慮する。

 

クエン酸第二鉄水和物(リオナ®錠)

食直後服用。一包化〇。

主な副作用は胃腸障害。下痢10.1%、便秘3.2%、腹部不快感2.5%。

透析患者さんは水分制限により便秘傾向なので、下痢の副作用をうまく活用できる場合もある。

構造が鉄なので、一般的な鉄剤同様便が黒くなる。鉄は一部吸収されるが、経口での鉄摂取は過剰になりにくい。

リオナ®錠添付文書参照

 

・スクロオキシ水酸化鉄(ピートル®チュアブル)

食直前服用。一包化×(やわらかい)

副作用は胃腸障害。下痢22.7%、便秘。

リオナ®同様、便秘傾向の患者さんには使いやすい。

構造はリオナ®よりもっと立体的にかさ高い鉄なのでほとんど体内に吸収されない。便は黒くなる。

錠剤が大きいのでかみ砕く必要があるが、ビスケット程度の柔らかさで噛む回数に決まりはない。味はなんとも言えないが、そのふにゃふにゃ感が気になる人もいる。

ピートル®チュアブル添付文書参照

 

・沈降炭酸カルシウム(カルタン®錠)

食直後服用。一包化〇

主な副作用は代謝異常、消化器症状。アルカローシス等の電解質失調(5%以上または頻度不明)、便秘・下痢(5%以上または頻度不明)、長期大量で腎結石・尿路結石(5%以上または頻度不明)

カルタン®錠添付文書参照

 

・セベラマー塩酸塩(フォスブロック®錠、レナジェル®錠)

食直前服用。一包化〇

主な副作用は便秘・便秘増悪38.2%、腹痛16.9%、腹部膨満感14.6%。

重大な副作用は腸管穿孔0.1%、腸閉塞0.2%。

口中に長く留めていると膨潤するため、咀嚼せず速やかに嚥下させること。

レナジェル®錠添付文書参照

 

・炭酸ランタン(ホスレノール®OD錠、ホスレノール®顆粒分包、ホスレノール®チュアブル)

食直後服用。チュアブル・顆粒は湿気により品質に影響する。一包化や再分包はしない。

主な副作用は消化器症状。悪心・嘔吐・便秘5%以上。

重大な副作用は腸管穿孔、イレウス(頻度不明)。

ランタンは骨に蓄積するとの報告がある。

チュアブルは十分にかみ砕いてから飲み込む(20~30回咀嚼する)。

チュアブルや顆粒は服用しにくいので、あとから出たOD錠に切り替えている人が多いと思われる。

ホスレノール®チュアブル・顆粒分包・OD錠添付文書参照

 

カリウム:上がりやすい⇒下げる治療

カリウムが高いと、最悪の場合心臓が止まる。

成分はポリスチレン~のみ。腸管でイオン交換する。剤形がいろいろある。重大な副作用は腸管穿孔、腸閉塞、大腸潰瘍(頻度不明)

主な副作用は便秘5%以上

 

・ポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®経口液、カリメート®DS92.5%、カリメート®散、アーガメイト®ゼリーなど)

食前・食後の指定なし。

カリメート®経口液は1包25なのでまあまあ重たい。ノンフレーバーとオレンジフレーバーがある。

アーガメイト®ゼリー20%は1個25gなのでまあまあ重たい。あと開けにくい。りんごフレーバーが別にあり、服用しにくい場合は好みでかけることができる。

カリメート経口液、アーガメイト®ゼリー添付文書参照

 

・ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®散、ケイキサレート®DS76%)

DS2包で散1包に相当する。

ケイキサレート®DS添付文書参照

 

❏カルシウム

リンの項目で書いたように、①血中リン濃度上昇によりカルシウム濃度が低下している人と、②それを補うために副甲状腺機能が亢進してPTH(パラっととれるパラトルモン)上昇、カルシウム濃度が上昇している人がいると思われる。

①に対して

L-アスパラギン酸カルシウム(アスパラーCA®錠)

②に対して

・シナカルセト(レグパラ®錠)

効能または効果:維持透析下の二次性副甲状腺亢進症 開始用量としては、成人には1日1回25㎎を経口投与する。以降はPTH及び血中カルシウム濃度の十分な観察のもと、1日1回25mg~75㎎の間で適宜用量を調整し、経口投与する。上限100㎎。増量を行う場合は増量幅を25㎎とし、3週間以上の間隔をあけて行うこと。

つまり少量から増量していく。

主な副作用は消化器症状で、悪心・嘔吐25.1%、胃不快感17.1%、食欲不振、腹部膨満。低カルシウム血症は14.7%。

レグパラ錠 添付文書参照

消化器症状の副作用のために増量できないケースもある。そこを改善した薬が最近新しく発売された。

・エボカルセト(オルケディア®錠)

レグパラ®の進化版。悪心・嘔吐の副作用が少ないので目標量まで増量しやすい。最大12mgまで増量可。

主な副作用は低カルシウム血症16.8%、悪心4.7%、嘔吐4.1%、腹部不快感3.7%。

オルケディア®錠IF

 

❏活性型ビタミンD:下がりやすい⇒上げる治療

ビタミンDの1α位をーOH化して活性型にすることができないので、もともと水酸化されているビタミンDを服用する。

アルファカルシドール(1αーOH-D3、アルファロール®カプセル、ワンアルファ®錠

肝臓で25位が活性化される。

カルシトリオール(1αー25(OH)2D3、ロカルトロール®カプセル

 

❏尿酸:上がりやすい⇒下げる治療

尿酸も尿から排泄されるので、高くなりやすい。排泄促進薬はもちろん使わない。

 

❏便秘

水分制限や食事制限などの要因から便秘に悩む患者さんは多い。

あまり使わない薬は

・カルメロース(バルコーゼ®):用法に、「大量(コップ1杯以上)の水とともに経口投与すること」とあり、水分制限をしている透析患者さんに適さない。

・酸化マグネシウム:血中マグネシウムが高くなってしまうため長期使用は避けて血中濃度に注意する。

酸化マグネシウムが使えないので、浸透圧性下剤として糖類下剤が使われることがある(大きな声では言えないけど)(適応外)。

D-ソルビトール、ラクツロース

糖として吸収はされないので、糖尿病患者さんでも血糖値に影響しない。

 

❏かゆみ

原因はさまざまな要因が絡んでいると思われる。

除去しきれない尿毒素、汗腺の萎縮、アレルギー反応。など。

乾燥が原因なら外用剤で保湿剤を用いる。

あとはレスタミン®など。

内服では抗アレルギー薬を用いるが、一部腎機能正常患者とは用量が異なるものがあるので注意する。

・オロパタジン(アレロック®錠)

用法用量:2.5mg分1~2

・セチリジン、レボセチリジン(ジルテック®錠、ザイザル®錠)

禁忌

・フェキソフェナジン錠(アレグラ®錠)

用法用量:1回30㎎1日2回

・ベポタスチン(タリオン®錠)

用法用量:腎機能正常患者の1/2~1/4量に減量

http://jsnp.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20140803222509-A4520DD9CE5CDD4378AF210A3016BF852D2EB9AFA805057CE9D389E93294B2B0.pdf

 

そして、適応が『透析患者、慢性肝疾患患者の掻痒症改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)』だけの薬がこちら。

・ナルフラフィン(レミッチ®カプセル、OD錠)

カッパー受容体を活性化し、かゆみを抑制する。

用法:1日1回2.5μgを夕食後または就寝前に経口投与。上限5μg。

主な副作用は、不眠15.8%、便秘4.8%、眠気3.1%

カプセルは一包化不適だったが、OD錠は光や湿気への安定性が向上し、一包化可能

特性(4) 安定性│OD錠の特性│鳥居薬品"レミッチ"

ジェネリックが最近発売になったが、カプセル・ODにかかわらず一包化は不適なので注意。

 

❏利尿剤

腎不全でも完全な無尿とは限らない。

排尿があるうちは利尿剤を使って排尿を促進する。

K保持は慎重投与。

 

❏むずむず足

訴える患者さんが多い。

クロナゼパム(リボトリール)、プラミペキソール(ビ・シフロール®錠、ミラペックス®LA錠)あたりが処方されているのを見たことがある。

 

なんとなく書き始めたけど、思ったより大変だったので、いったんここで切ろう。