JJCLIP初心者の私が思う、JJCLIPの好きなところ。
- 本当に初心者でも飛び込みやすい、なごやかな雰囲気
- 議論の深まり方が無限
- 最強のEBMerがつどっている
◆今回の仮想症例シナリオとお題論文
PMID:27041987
◆仮想症例シナリオのPECO
・Exposure: 防腐剤フリーの緑内障の点眼を使用する
・Comparison: 防腐剤入り緑内障点眼薬を使用する
・Outcome: 目が傷つかない
◆論文のPECO
・Patiet: 23~88歳、339名、高眼圧症か解放隅角
緑内障が片目または両目に6か月以上ある患者。
まず防腐剤(塩化ベンザルコニウム)入りラタノプロストを6か月使用。目に2つの症状、または1つの症候と1つの症状がでた患者を抽出。
・Exposure、Comparison: 使用薬剤を防腐剤フリーのタフル
プロストに切り替え。12週間使用し、2週目、6週目、12週の目の症状と症候をみる。
また12週後の眼圧、差し心地、治療効果を比較する。
⇒介入前後比較(C群なし)
・Outcome: プライマリアウトカムとはっきり記載はなし。目の5症状?
◆論文の批判的吟味
□一次アウトカムは明確か?
⇒明確ではない。
仮説生成的研究といえるかも。仮説を決定づける研究ではない。
□真のアウトカムか?
⇒真のアウトカムではない。
ただし、アドヒアランス向上のために重要なポイントとは言えるかもしれない。
□メタ分析 4つのバイアスについての評価
・評価者バイアス(論文を選び、評価する人のバイアスが入っていないか?)
⇒バイアスMAX入りまくり
自分の論文を2つもってきて、集めただけ。参天社員の論文。
・出版バイアス(都合のいいものだけ選んでいないか?)
⇒評価不能
都合のいいもの集めました。自分の論文以外を探してもいない。
・元論文バイアス(RCTなど、選んだ論文の内容は質の高いものか?)
⇒バイアスあり
二重盲検ではなく、オープンラベルの介入前後比較。あまり質は高くない。
・異質性バイアス(ごちゃごちゃに混ぜてないか?)
⇒判定不能
集めた論文が2つしかないので、異質も何もない
⇒⇒バイアス&バイアス&バイアス&バイアス
□結果
・目の症状(防腐剤の副作用)について
(お題論文より)
刺激感、異物感、涙目、かゆみ、ドライアイすべての項目について有意差をもって改善した。
ベースライン339名に対して目の症状の程度がmild~severeの患者割合変化(防腐剤有りラタノ
プロスト使用後→防腐剤なしタフル
プロスト12週間使用後)は以下の通り。
刺激感:59.6→16.8%
異物感:39.8→13.9%
涙目:40.7→15.2%
かゆみ:34.2→14.9%
ドライアイ:57.8→23.1%
・目の症候について、眼瞼炎、角膜着色、結膜着色、結膜充血すべて有意差をもって改善した。
・眼圧(成分の有効性)について、有意差をもって改善(なぜかラタノ
プロスト:キサラタンと比較)
防腐剤有りラタノ
プロスト使用後→防腐剤フリータフル
プロスト使用後6週→12週の眼圧は以下の通り。
16.6±2.6mmHg→16.0±2.3mmHg→15.7±2.5mmHg
□議論
・C群設定なしの前後比較(単アーム)は注意が必要。
防腐剤がないからいい結果が出たのか不明で、自然経過の可能性もある。
前後比較の研究試験デザイン:ミラーイメージ(精神科領域のLAI) (ちょっと難しくてついていけなかった…)
⇒さんた論法
・少なくとも試験に参加した患者さんは「角膜症状が改善した」と感じているので、同じ状況を作れれば、同じように効果を感じられるかもしれない。説明の影響は、あなどれない。
⇒ノセボ効果
・薬物の影響ってちっちゃい。予後改善の1ファクターではあるけれど、人生を変えるファクターとして広い目でみると、ちっちゃいのかもしれない。
・シナリオに戻って、どうするか
すでに角膜症状のある患者さんに対して防腐剤フリーは提案してみる価値があるかもしれない。
防腐剤フリーのユニットドーズ製剤は金額が高くなる可能性があるので、注意が必要。しかし、
アドヒアランスが確認しやすいというメリットもある。(なるほどー!)
conclusionより
There have been suggestions that BAK(塩化ベンザルコニウム) enhances the penetration of active molecules into deeper ocular structures.98
However, this phenomenon is better considered as histologic toxicity, rather than a means of improving penetration; in any case, acute pharmacodynamic effects are not necessarily indicative of conditions during chronic sustained treatment.
防腐剤の塩化ベンザルコニウムが、角膜の物質透過性を高める報告もある。ただし、組織学的な話で、薬力学的にどうかわかんないけど。
この98番の論文が
ウサギの角膜での結果らしい。
以下拙いメモ書き。
・実薬ラタノプロスト1日1回群258名 vs プラセボ群258名で24か月試験。
・プライマリアウトカム:time to visual field deterioration ということで視野低下。
・結果ラタノプロスト群の低下眼圧 3.8mmHg(SD4.0)プラセボ群 0.9mmHg(SD3.8)また、ラタノ
プロスト群が有意差をもって長期に視野を保持した。ハザード比0.44(95%信頼
区間0.28-0.69;p=0.0003)
なぜか点眼の防腐剤フリーについての論文は、同じ成分の防腐剤有無ではなく、成分自体変更しているものが多い。これもラタノ
プロスト・ビマト
プロスト(防腐剤有り)→トラボ
プロスト(防腐剤無し)に変更。
以下拙いメモ書き
・デザイン:オープンラベル、 historical control study
・ラタノプロストorビマトプロスト単剤使用で角膜障害がある緑内障患者235名
・トラボプロスト(防腐剤フリー)に切り替えて3か月使用
・70.2%の患者で角膜症状が1レベル以上改善
・眼圧も維持か改善(悪化はしなかった)
□Efficacy and safety of preservative-free latanoprost eyedrops, compared with BAK-preserved latanoprost in patients with ocular hypertension or glau... - PubMed - NCBI
一応、同成分で防腐剤有無の比較試験の論文もあるようだ。
以下拙いメモ書き
・デザイン:ランダム化比較試験
・高眼圧または解放隅角緑内障患者で、ラタノプロスト(防腐剤ベンザルコニウム有り)群vsラタノプロスト(防腐剤フリー)群に分け、84日間投与
・結果、角膜症状スコアは防腐剤フリー群で低かった。84日時点で0.18vs0.46;p=0.001
□A systematic review of adverse events in placebo groups of anti-migraine clinical trials. - PubMed - NCBI
片頭痛の薬は吐き気がありますと説明したら、プラセボでも副作用がでちゃった論文。
ノセボ効果とは、薬効のないものでも、説明を聞いたことによる思い込みで副作用がでること。
以下拙いメモ
・デザイン:システマティックレビュー、データベースはpubmed,medline,CENTRALを用いて2007年までの69の試験(NSAIDs8、トリプタン系56、抗痙攣薬9)を評価。
・片頭痛治療薬NSAIDs、トリプタン系、抗痙攣薬での試験におけるプラセボでの有害事象の発生率を調べた。
・プラセボ群でのほうが有害事象が多く、その有害事象は実薬群の有害事象と関連があった。例えば、食欲不振や記憶力低下は抗痙攣薬の代表的な有害事象で、抗痙攣薬のプラセボ群に現れた。
□Nocebo effects with antidepressant clinical drug trial placebos. - PubMed - NCBI
ノセボ効果に関する論文2つめ。
抗うつ薬のノセボ効果により、循環器系の有害事象で救急搬送
以下拙いメモ
26歳の男性が29カプセルのプラセボを抗うつ薬と信じて服用。低血圧を起こし静脈内輸血が必要となった。カプセルがプラセボだと知るまで続き、知ると有害事象は急速にやわらいだ。
そもそも防腐剤有無の前に、有効成分で有害事象に差はあるかについて。
以下つたなめも
・デザイン:二重盲検、実薬2群間比較、phase3
・高眼圧症または解放隅角
緑内障の患者533名を2群に分けて、タフル
プロスト0.0015%vsラタノ
プロスト0.005%を1日1回24か月で経過観察。どちらの薬剤も防腐剤は塩化ベンザルコニウム。
・プライマリアウトカムは眼圧。有害事象を記録し、角膜安全性を評価。
・有害事象について、両群で有意差がついている項目はないものの、p=0.058と低めの項目が「目の痛み」。タフル
プロスト群15名(スコア5.6)vs ラタノ
プロスト群7名(スコア2.7)とややタフル
プロスト群で多い印象。
介入前後比較だと、本当に介入による影響なのか、時間が経ったことによる変化なのか判断できないので、他のデザインの試験を探す。
以下つたなめも
デザイン:クロスオーバー試験(同一被験者の異なる時間軸で比較する)解放隅角
緑内障または正常眼圧
緑内障患者をランダムに振り分け。
GroupA10名:タフルプロスト(防腐剤フリー)6か月使用→タフルプロスト(防腐剤有り)6か月使用
GroupB10名:タフルプロスト(防腐剤有り)6か月使用→タフルプロスト(防腐剤フリー)6か月使用
アウトカム:眼圧、角膜浸食、涙液層破壊時間(TBUT=ドライアイの診断基準)、不快感
結果:防腐剤有り→フリーに変えた後で満足度促進(p=0.03)、TBUTはフリーより防腐剤有りで数字上劣る(p=0.06)。防腐剤フリー→有りに変えた群はそうならなかった。
力尽きたからそのうち読む。
◆発見・反省・感想
深みがすごい論文抄読会だった。
もやっとしていたものが少し晴れて、
EBMがどういうことか少し理解が深まったような。
論文の筆者についても調べると、見えてくるものがあるんだなと発見。
みなさますごすぎて、尊敬しかない。でも、目指したいところがあるのはいいもんだ。
ちょっとずつでも、近づけるといいなあ。