【医薬品勉強会忘備録】ヤーズフレックス™配合錠
ポイントは「そもそも28日周期で出血起こす必要、なくない?」
ヤーズ®:28日周期でコントロール
ヤーズフレックス™:あなたのタイミングでコントロール=フレックス!
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◆そもそもヤーズ®配合錠とは
⇒月経困難症の治療薬。
28日周期で月経をコントロールできる。 出血時に多少痛みが生じることがある。
・月経困難症とは
月経時、あるいはその直前から強い下腹痛や腰痛(月経痛)が始まり、月経期間中に日常生活を営むことが困難な状態をいう。
月経困難症 日本産科婦人科学会 日産婦誌59巻9号研修コーナーより引用
⇒生理しんどい。
・月経とは
生理のしくみ|知っておきたい 女性のカラダ基礎知識|生理痛と女性のからだの悩み 生理のミカタより引用・改変
卵子のもとになる卵胞を成熟させて、卵子を準備&それに伴い子宮内膜を厚くしてふかふかベッドにしておく
→成熟完了。卵子を子宮ふかふかベッドに送り込む
→妊娠が成立しないと、不要になった膜が剥がれ落ちて、それをぎゅううと絞り出す(生理)
そりゃ痛いよ。
卵胞ホルモン(エストロゲン)は、月経前期において卵胞が成熟すると量が多くなる。子宮内膜を厚くする働きがある妊娠準備ホルモン。ホルモンの量の変動がサインで、ピンクの卵胞ホルモン(エストロゲン)の山が高くなると「成熟完了、卵子を子宮に送り込めるよ!」というサインになって排卵が起こる。
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、月経後期において子宮内膜の増殖を抑える妊娠維持ホルモン。
図にないけどプロスタグランジンが、生理の時に子宮内膜から分泌され、子宮を収縮させる。ぎゅうう。この分泌量が多いと、痛くてつらい。
そこで。
薬として外からホルモンをプラスすることで、月経周期第1日目から卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)の体内濃度が高いと「卵胞成熟、完了済み?!」と勘違いする。すると卵胞が成熟しないので、卵子が子宮に送り込まれない。子宮内膜が厚くならない。痛くない。いえーい!生活が困難じゃない!
・ヤーズ®配合錠の組成
エチニルエストラジオール(合成エストロゲン)0.020mg/ドロスピレノン(合成黄体ホルモン)3mg
添付文書より引用
・ヤーズ®配合錠の用法・用量
1日1錠を毎日一定の時刻に定められた順にしたがって、28日間連続経口投与する。
以上28日間を投与1周期とし、出血が終わっているか続いているかにかかわらず、29日目から次の周期の錠剤を投与し、以後同様に繰り返す。
服用開始日:本剤を初めて服用させる場合、月経第1日目から服用を開始させる。
添付文書より引用
◆ヤーズ®配合錠とヤーズフレックス™配合錠の違い
⇒28日周期にとらわれず、あなたのタイミングで休薬する。デメリットは、あなたのタイミングがいつかは不明。
・ヤーズ®配合錠
1シートに24錠の実薬と4錠のプラセボを含む。
製品情報|Gynecology Expert|バイエル薬品より
左上からスタートし、24錠のうすピンク色の錠剤はホルモンが含まれていて、オレンジの枠で囲った白い錠剤4錠は、なにも含まれていないプラセボだ。
つまり最後4日間はなにも飲まない、休薬しているのと同じ。プラセボはシートに入っていなくたっていいんだけど、何日休薬したかわからなくならないようにするための親切だ。
この休薬期間に生理のような出血が起こる。
平均月経周期は28日と言われているが、この休薬により28日周期のリズムを保つ。
問題点として、この生理のような出血のときに、痛みがでやすい(服用していないときと比べて軽減はしていても)。
しかし、周期をコントロールできる。
服用を続けているうちに気づく。
休薬すると生理を起こせるなら、25日目以降も実薬を服用しつづければ生理を遅らせられるし、24日よりもっと早く生理を起こすことも可能だよね?と。
しかしそれは、決められた用法とは異なるので推奨できなかった。
ただしそもそも28日周期で出血を起こすのは、このヤーズ®配合錠のもとになっている経口避妊薬において、妊娠していないことを確認できるようにするためだったそうだ。
避妊が目的ではないのなら、出血を起こす必要はない・・・?そこで、ヤーズフレックス™。
・ヤーズフレックス™配合錠
なにも含まれていないプラセボが入っておらず、1シート28錠すべて実薬だ。
組成は変わらない。
製品情報|Gynecology Expert|バイエル薬品より
・ヤーズフレックス™配合錠の用法・用量
1日1錠を経口投与する。24日目までは出血の有無にかかわらず連続投与する。
・25日目以降に3日間連続で出血が認められた場合
または、
・連続投与が120日に達した場合
は、4日間休薬する。休薬後は出血が終わっているか続いているかにかかわらず、連続投与を開始する。以後同様に連続投与と休薬を繰り返す。
添付文書より引用
どのタイミングで休薬4日間をはさむかは、あなた次第。
てっきり、基本的に120日連続で服用すればそれまでは生理のような出血は起こらないのかと思いきや、そうではないようだ。
連続服用していても途中で生理のような出血が起こることがあり、それが本来のあなたの月経周期ということらしい(?)。
本来のわたしの月経周期が80日だとすると、28日周期で休薬を入れて生理を起こして痛みを生じるよりも、回数を減らせる。
また宿泊や大会など自分の予定に合わせて、例えば38日とかで休薬を入れることも可能。
これぞフレックス!!
◆メーカーさんに聞いた、ヤーズフレックス™錠への疑問
Q.血栓症のリスクはヤーズと変わらない?
⇒変わりません。
Q.月経周期を自分の都合に合わせて変動させることによる、リスクはない?
⇒今のところありません。
Q.値段に差はある?
⇒ヤーズ®:286.65円/実薬1錠あたり
ヤーズフレックス™:275円/実薬1錠あたり
ヤーズ®は1シートで薬価がついている=プラセボにも薬価がついているので、実薬あたりで計算すると、ヤーズフレックス™のほうが安い。
◆感想
画期的だぜ!というよりは、現場の声をもとに用法を柔軟にしましたって感じ。
ヤーズ®等から切り替えたほうが、わかりやすいかな?
月経周期が読めないのは、デメリットになりうるので、使用者がいかにコントロールするかかな。
◆注意事項
ここで終わると手軽さだけが印象付けられそうなので、最後に注意事項を貼って終わりにする。
警告
- 本剤の服用により,血栓症があらわれ,致死的な経過をたどることがあるので,次のような症状があらわれた場合は直ちに投与を中止し,適切な処置を行うこと.
緊急対応を要する血栓症の主な症状
- 下肢の急激な疼痛・腫脹,突然の息切れ,胸痛,激しい頭痛,四肢の脱力・麻痺,構語障害,急性視力障害等
- 患者に対しても,このような症状があらわれた場合は,直ちに服用を中止し,救急医療機関を受診するよう説明すること.
重要な基本的注意
1.
- 本剤を避妊目的で使用しないこと.[日本人における避妊目的での有効性及び安全性は確認されていない.]
- 2.
- 本剤の服用により,年齢,喫煙,肥満,家族歴等のリスク因子の有無にかかわらず血栓症があらわれることがあるので,血栓症が疑われる症状があらわれた場合は,投与を中止するなど適切な処置を行うこと.
血栓症が疑われる症状
- 下肢の疼痛・腫脹・しびれ・発赤・熱感,頭痛,嘔気・嘔吐等
- 3.
- 血栓症のリスクが高まる状態(体を動かせない状態,顕著な血圧上昇,脱水等)が認められる場合は,投与を中止するなど適切な処置を行うこと.
- 4.
- 本剤服用患者には,投与開始時及び継続時に以下について説明すること.
- ・血栓症は生命に関わる経過をたどることがあること.
- ・血栓症が疑われる症状があらわれた場合や,血栓症のリスクが高まる状態になった場合は,症状・状態が軽度であっても直ちに服用を中止し医師等に相談すること.
- ・血栓症を疑って他の医療機関を受診する際は,本剤の使用を医師に告知し,本剤による血栓症を念頭においた診察を受けられるようにすること.
- 5.
- 本剤服用中にやむを得ず手術が必要と判断される場合には,血栓症の予防に十分配慮すること.[「禁忌」11.の項参照]
- 6.
- 年齢及び喫煙量により心血管系の重篤な副作用の危険性が増大するとの報告がある.従って,本剤服用患者には禁煙するよう指導すること.[「禁忌」5.の項参照]
- 7.
- 本剤投与に際しては,問診,内診,基礎体温の測定,免疫学的妊娠診断等により,妊娠していないことを十分に確認すること.
- 8.
- 本剤の投与にあたっては患者の病歴調査及び検診が必要である.この検診には,血圧測定,乳房・腹部の検査及び臨床検査が含まれる.本剤投与中は6カ月毎の検診を行い,1年に1回以上,子宮・卵巣を中心とした骨盤内臓器の検査を行うこと.また,1年に1回,子宮頸部の細胞診の実施を考慮すること.
- 9.
- 乳癌の検査は,患者に自己検診を行うよう指導すること.特に,乳癌の家族歴又は乳房に結節のある患者では注意が必要である.
- 10.
- 本剤の投与にあたっては,器質的疾患の増悪の有無を確認するため,不正性器出血の発現に注意し,定期的に内診及び超音波検査等による診察を行うこと.本剤投与中に腫瘤が増大するなど器質的疾患の増悪が認められる場合や,臨床症状の改善がみられない場合は,他の治療法も勘案したうえで投与継続の判断を行うこと.特に,子宮内膜症性卵巣のう胞(卵巣チョコレートのう胞)は,頻度は低いものの自然経過において悪性化を示唆する報告があるので,画像診断や腫瘍マーカー等の検査も行うこと.
- 11.
- 本剤投与中は経過を十分に観察し,期待する効果が得られない場合には漫然と投与を継続せず,他の適切な治療を考慮すること.
- 12.
- 用法・用量に従って服用しても,性器出血が長期間持続する場合は,腟細胞診等の検査で悪性疾患によるものではないことを確認の上,投与すること。
- 13.
- 服用中に激しい下痢,嘔吐が続いた場合には本剤の吸収不良を来すことがあり,不正性器出血の発現の可能性及び妊娠のリスクが高くなるので注意すること.
- 14.
- 本剤投与により希発月経等の月経異常や不正性器出血がみられる.患者にはあらかじめ十分に説明し,通常の月経に比べて出血量が多く持続日数が長い場合あるいは月経の発来がない場合には,医師へ相談するよう指導すること.出血が続く患者には必要に応じて血液検査等を実施し,異常が認められた場合には鉄剤の投与又は本剤の投与中止など適切な処置を行うこと.
- 15.
- 服用方法を遵守していない場合等何らかの理由により妊娠の可能性が疑われる場合は,医師へ相談するよう指導し,妊娠の有無について確認すること.
- 16.
- 妊娠を希望する場合には,本剤の服用を中止後,月経周期が回復するまで避妊させることが望ましい.
- 17.
- 本剤は黄体ホルモンと卵胞ホルモンの配合剤であることから,黄体ホルモンまたは卵胞ホルモンを含有する薬剤(経口避妊剤等)を使用している場合は,本剤の投与開始前に中止させること.また,本剤投与中にこれらの薬剤を使用しないよう患者に指導すること.
ヤーズフレックス配合錠より引用