ちいさないっぽ

心にうつりゆくよしなし事を、書くだけ。責任は負わない。

【医薬品勉強会忘備録】リピディル®

パルモディア錠®(ペマフィブラート)がようやっと薬価収載。

発売しますよって言われてからここまで長かった。

 

  

ごねる、とか言われてるし。

あんまり薬価収載されないものだから、ひとまずリピディル®(フェノフィブラート)の勉強会をしたときの記録。

 

 【背景】

動脈硬化とは

動脈の血管壁が老化して硬くなるだけでなく、血管の内側にも脂肪のかたまりがこびりついて血行が悪くなり、血液が詰まりやすくなる状態です。動脈がひどく傷んでくるのは40代からといわれます。

加齢、糖尿病、高血圧、喫煙などさまざまな原因が重なって進みますが、特に悪化させるのは、いわゆる悪玉コレステロール。悪玉コレステロールは、動脈の血管壁におかゆのような脂肪のかたまり(プラーク)を作って、こびりつきます。動脈に新品のホースのような弾力があり、その中を澄んだ血液が勢いよく流れていくのがからだにとって一番いい状態ですが、動脈硬化の血管は硬くなってひび割れた古いホース。その中を脂肪や糖でドロドロになった血液が流れ続けると、プラークが大きくなって血栓ができ、最悪の場合、血管が詰まったり、破裂したりします。

動脈硬化の危険因子:脂質

「脂質(血清脂質)」というのは血液に溶けているコレステロール中性脂肪などの脂肪分のこと。これらが増えすぎると心筋梗塞脳卒中などの動脈硬化性疾患をひきおこします。脂質の異常だと診断されるのは、

  1. 悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)が多すぎる場合
  2. 善玉コレステロール(HDL-コレステロール)が少なすぎる場合
  3. 中性脂肪(トリグリセライド)が多すぎる場合

の三つです。

日本動脈硬化学会 一般啓発サイト -動脈硬化の病気を防ぐガイドブック-

 

【リピディルの特徴】

1.1日1回投与のフィブラート系脂質異常症治療薬

2.トリグリセライド低下作用、HDL-コレステロール上昇作用を有する

3.高尿酸血症・糖尿病合併例の血清脂質も改善 

 

【リピディルの基本情報】

◆効能・効果

高脂血症(家族性を含む)

コレステロールのみが高い高脂血症に対し第一選択薬とはしないこと。

カイロミクロンが高い脂質異常症に対する効果は検討されていない。

 

◆用法・用量

1.総コレステロール及びトリグリセライドの両方が高い高脂血症には、1日投与量を106.6mgより開始すること。なお虚血性心疾患のリスクファクターを有し、より高い治療目標を設定する必要のある場合には1日投与量を159.9~160mgとすること。

2.トリグリセライドのみが高い高脂血症には、1日投与量を53.3mgより開始すること。

 

◆作用機序

脂質代謝の主要臓器である肝細胞中の核内受容体PPARαを活性化し、脂質代謝に関与する遺伝子の転写を調節することにより血清コレステロール低下作用、血清トリグリセライド低下作用および血清HDL-コレステロール増加作用を発揮します。

 

【臨床成績:FIELD試験】

Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes (FIELD) study: baseline characteristics and short-term effects of fenofibrate

◆2型糖尿病を合併した高脂血症患者における作用(海外データ)

実施国:オーストラリア、ニュージーランドフィンランド

対象:軽度の脂質異常症を合併する2型糖尿病患者9795例

投与方法:フェノフィプラート製剤200㎎もしくはプラセボを1日1回、5年間投与

評価:1次エンドポイントー冠動脈イベント(非致死的心筋梗塞、冠動脈心疾患死)

   2次エンドポイントー全心血管イベント

   3次エンドポイントー細小血管イベント

デザイン:ランダム化比較試験、二重盲検、ITT解析。追跡率70.5%

 

◆結果

一次エンドポイント

・冠動脈イベント(相対リスク減少率):-11(p=0.16:有意差なし)

   内、非致死的心筋梗塞:-24(p=0.010)

二次エンドポイント

・全心血管イベント(相対リスク減少率):-11(p=0.035)

三次エンドポイント

・レーザー治療の施行リスクに対する影響(相対リスク減少率):-31(p=0.0002)

 

高尿酸血症を合併する脂質異常症の治療】

高尿酸血症痛風の治療ガイドライン 第二版(2010年改訂)

ー合併症・併発症を有する患者の治療ー

脂質異常症ステートメント

1.高尿酸血症の治療とともに動脈硬化性疾患の一因子となる脂質異常症を治療し、動脈硬化性疾患の軽減を図ることを目標とする。

4.脂質異常症治療薬の中には血清尿酸値に影響を与える薬剤があるので考慮する。特にフェノフィブラートは高グリセリド血症と高尿酸血症の合併、特に尿酸排泄低下型高尿酸血症の合併には有効な薬剤である。

 

フェノフィブラートの尿酸値に対する影響は、ベンズブロマロンやロサルタン同様、URAT1阻害による尿酸排泄促進によるものと考えられる。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/49/2/49_2_89/_pdf/-char/en

 

【まとめ】

LDL-コレステロールを下げる効果よりも、トリグリセリドを下げる効果とHDL-コレステロールを上げる効果が高い。

FIELD試験においては、一次エンドポイトである冠動脈イベントは有意に抑制しなかった。

尿酸値を下げる効果が期待できる。