【読書録】愛着障害 子ども時代を引きずる人々
ふつうは表に出したくない、心の奥底に誰にも見つからないようにしまっておきたい感情。
世間からいいように思われないであろう感情。
それが生々しくつづられている。迷い、恐怖、偽り…
それらは全く理解できない突拍子もないものではなく、自分も心の底にしまい込んでいて、共感できなくないものだった。
しかし、世の中のみんながみんな、共感できるのだろうかと疑問だった。
なにかちょっと、世間でいう普通とは違ったような…
疑問はそのまま心の底にしまい込んだ。
先日ブログに書いた、恋愛の科学というサイトで取り上げられていた「愛着障害」。
注文していたそれに関する本が届き、読み終わった。
「愛着障害」という単語から想像するよりも身近な問題なように感じた。
これを知ると、ひとや自分の心のとらえ方が少し変わるかも。
■基本理解
♦愛着の絆で結ばれた存在を求め、そのそばにいようとする行動を、愛着理論の生みの親でイギリスの精神科医ジョン・ボルビィは、「愛着行動」と呼んだ。(P.26)
♦愛着の絆が形成されると、子どもは母親といることに安心感を持つだけでなく、母親がそばにいなくても次第に安心していられるようになる。安定した愛着が生まれることは、その子の安全が保証され、安心感が守られるということでもある。ボルビィの愛着理論を発展させた、アメリカの発達心理学者メアリー・エインスワースは、愛着のこうした働きを、「安全基地」という言葉で表現した。(P.32)
♦愛着に影響するいくつかの要素、すなわち、愛着が安全基地としてうまく機能しているか、すとれるに対してどういう愛着行動を示すか、によって、子どもの愛着パターンはおおむね4つに分かれる。その四つを知っておくことは、大人の愛着スタイルを理解するうえでも非常に役立つ。
♦これまで行われた双生児研究所や養子研究の結果は、愛着障害の要因が、主として養育環境によるものであることを示している。おおむね、七~八割が養育などの環境的要因によるとされ、残りの二~三割が遺伝的要因によると考えられている。(P.53)
♦恋人や配偶者は、愛着スタイルに関して、かつて母親が及ぼした影響に匹敵するほどの大きな影響を及ぼすことがある。(P.106)
■愛着障害の特性
・ほどよい距離がとれない
・傷つきやく、ネガティブな反応を起こしやすい
・ストレスに脆く、うつや心身症になりやすい
・非機能的な怒りにとらわれやすい
・過去にとらわれたり、過剰反応しやすい
・「全か無か」になりやすい
・全体より部分にとらわれやすい
♦独創的な創造性との関係
愛着障害についてのケースをたどっていくと、すぐに気づかされるのは、作家や文学者に、愛着障害を抱えた人が、異様なほどに多いということである。
(中略)
彼らの創造的な人生の原点にあるのは、既成の価値を否定し、そこから自由になろうとしたことである。彼らにそれができたのは、彼らが内部に不安定な空虚を抱え、常識的な行動によっては満たされないものがあったからだ。そして、その源をさかのぼれば、愛着の傷ということに行きつくだろう。それが、彼らを社会的な常識から解放し、新しい価値を手に入れる旅へと駆り立てたのである。(P.186)
■愛着障害の克服
♦愛着障害というと、精神科医も心理療法家も、ひどい虐待を受けた子どものケースを連想するのがふつうである。多くの人が根底に抱えている不安定型愛着の問題にどういうアプローチをとるべきか、ということについては問題意識すらもっていないことが多い。驚くべきことだが、この部分に大きな死角が生じていることが、ずっと見過ごされてきたのである。(P.243)
♦いかに克服していくか
・安全基地となる存在
・愛着の傷を修復する
・役割と責任をもつ
安定型と不安定型(不安型、回避型)のそれぞれの愛着スタイルについて詳細で具体的な記載があり、理解が深まる。愛着スタイル診断テストも収載されているので、自分はどの要素が強いのか診断できる。
不安定型でも不安型と回避型では愛着スタイルが全く異なる。
苦痛にならない距離感や気にすることや考え方が全く異なる。
少し生きにくさを感じているひとがいる。そのことが広く理解されれば、世界は少し優しくなるように思う。
太宰治さんのことも本書で取り上げられているので、心の深い部分が理解できるかもしれない。